Member Interview vol.27【特別編】

■Member Interview vol.27【特別編】

ヤン・イジュン(Yang Yijung)さん
(聞き手:Kage)

全国各地で活躍する、
日本似顔絵アーティスト協会の皆様の
多種多様な考えや働き方をご紹介する
Member Interview。

今回は韓国で大人気の似顔絵ショップ「ドトリ・カリカチュア」のオーナーであり、国際大会でも数々の受賞を誇る実力派アーティスト、ヤン・イジュン(Yang Yijung)さんにお越し頂きました。

―(Kage)ヤンさん、よろしくお願いします!

ヤンさん(以下Y):このようなインタビューに参加させて頂き、心から光栄に思います。よろしくお願いします!

―日本でも「ドトリ・カリカチュア」を体験したお客様の声をよく聞きます。すごい人気ですが、現在の事業について教えてください。

Y:ありがとうございます。私たちの事業は、イベント、店舗、スクールの、3つです。そのうち7割が店舗事業になります。

―お店は現在、何店舗ありますか?

Y:合計32店舗です。

―32店舗ですか!?すごいですね!全店舗で年間、何人くらい描いているのですか?

Y:地域や店舗によって異なりますが、全店舗合わせて100~150万人ほど描きます。最高記録としては、1つの店舗で1日に13,000人を描いたこともあります。

―それはもう、間違いなく世界一の記録ですね!でもドトリって、まだ開業4年目なんですよね?

Y:はい。2022年2月に弘大(ホンデ)の延南洞(ヨンナムドン)でスタートしました。

―ヤンさんは、今日の成功を創業時から想定していましたか?

Y:成功というより、韓国に新しい美術の遊び文化を生み出したい、という思いが強くありました。

―たしかにドトリのお店は、雰囲気も作風も遊び心に溢れていて、とてもユニークです。

Y:私たちの絵は軽い表現に見えるかもしれませんが、作品性だけを追求するのではなく、絵を愛する純粋な気持ちを多くの人たちに伝えたい、という想いがあります。その想いに、多くの人たちが共感して下さったと考えています。

―ヤンさんはいつから絵を描き始めたのですか?

Y:小学生の頃です。友達と絵画教室に通っていました。私は友人に比べて覚えが遅くて、特に目立たない生徒でした。しかし、美術は結果よりも過程が大切で、努力を続けていれば必ず成果に繋がると信じていました。だから絵を手放さずに続けてきて、結果、自然と自分の人生の方向が決まった気がします。

―カリカチュアを始めたのはいつですか?

Y:2007年です。全州(チョンジュ)韓紙文化祭りという、1000年の歴史を持つ伝統韓紙の魅力を発信するイベントに、大学生代表として参加しました。そこで、絵で人を幸せにできるということを、初めて実感しました。

―ヤンさんはどうやって絵を学んだのですか?

Y:一般的には優れたアーティストの作品を研究すると思いますが、私はすこし違う方法を取っていました。カリカチュア以外のもの、タイポグラフ、編集デザイン、インテリア、ボタニカルアート、古い映画ポスター、名画などからインスピレーションを得ることを大切にしてきました。自分だけの色をつくりたい、という思いが強かったのだと思います。手をたくさん動かすより、頭の中で様々な可能性を考える。絵の本質的な目的を意識しながら、自分なりの方向性を模索してきました。

―たしかにヤンさんの大会で描く作品は他の誰とも違うスタイルですね。とても不思議で、いつも難解で、足を止めてじっと見入ってしまいます。ヤンさんは大会をどのようにお感じですか?

Y:私にとって大会は、実力を示す場であると同時に、自分自身の根気を試す場でもあります。最も上手な作家になることよりも、その瞬間に全力を尽くして自分に恥じない作品を描くこと。受賞よりも、最後まで集中すること。これを大切にしています。

―大会をつくる側として、とても嬉しいお考えです。僕自身は、大会とは「自己ベストを更新する機会」と考えています。参加者全員が個々の特技でベストを尽くすので、会場には創造のエネルギーが充満して、「ヤバイ境地」になります。この環境にいるだけで、自然と自分も自分以上に引き上げられる。とても貴重な機会です。

Y: 私もそう思います。

―さて、もう少しヤンさんのキャリアを伺いたいです。ヤンさんは「ドトリ・カリカチュア」の前から似顔絵のお店を運営されていたのですよね?

Y:そうなんです。2015年に全州の韓屋村(ハノクマウル)で開店しました。この頃は一般的なカリカチュアショップでした。

―創業当時は、どんなご苦労がありましたか?

Y:開業してすぐに父が病を患いました。店舗で営業をしながら父の看病をし、同時にアルバイトを掛け持ちで行い生計を立てていました。忙しさのあまり最初の食事が深夜になることがよくありました。週末は店舗営業後に夜市へ移動し、さらに絵を描き続けました。そんな生活は2年ほど続きました。おそらく私の人生で最も自分を鍛えた時間でした。これを乗り越えられたから現在の基盤が築けて、今尚、誠実に絵と向き合う姿勢を持ち続けることが出来ています。

―創業時は誰も頼れないから、全部自分がやるしかないですよね。僕も毎晩終電で帰宅していました。忙しい週末は帰宅が出来ず、中間地点にあった会社のソファで寝ていました。売上が厳しい日になんとかもっと描こうとして終電を逃し、一度だけこっそりと商業施設のバックヤードで隠れて寝た日がありました。真っ暗でそれはそれは死ぬほど怖かったです。今では良い思い出です(笑)。

Y:7年前でしょうか。釜山でKageさんのセミナーを聞きました(2018年KOSCA)。こうしたお話を伺って、私はとても背中を押されました。あの時をきっかけに、本格的に挑戦する決意を固めました。

―本当ですか。それは嬉しいです!でも、簡単に飛び越えて、遥か遠くまで行きましたね(笑)!

Y:いえいえ。私はまだまだ未熟で学び続けている途中です。絵のタッチなんかも、私は研究することが好きで、これまで様々なスタイルに挑戦をしてきました。その中で最も愛されたものがドトリの太くシンプルな作風でした。

―ドトリの愛らしいブランドは、ヤンさんが考えに考えて生み出した、夢のブランドなのですね!

Y:そうですね。実際、私たちのお店は、すべての店舗に独自のコンセプトとインテリアがあります。例えばメイン店舗である弘大(ホンデ)は、「ビルの森の中に佇む、小さな小屋のような、まるで童話に出てくる画家たちのアトリエ」という世界観です。

―そちらで描いて頂きましたが、似顔絵だけではなく、体験そのものがとても楽しくてワクワクしました。

Y:以前、韓国ではカリカチュアの認知は高くありませんでしたが、現在は全国に店舗が増えて、テレビで紹介されるなど、大きく認識は変わりました。美術の教科書に私たちのカリカチュアが紹介されたことは、とても誇りに思っています。

―素晴らしいですね。最後になりますが、今後の目標や夢をお聞かせください。

Y:大きな目標を抱えるよりも、次世代が私を超えていく姿を応援する存在でありたいと思っています。いつかは静かな地方へ戻り、自分自身の絵を描き続けたいと考えています。毎年、「あと1年」と自分に言い聞かせながら会社を運営しています。今はまだ自分の役割が必要と感じるので最善を尽くしています。

―ヤンさん、この度はインタビューにご協力頂きまして、本当にありがとうございました。とても勉強になりました。

Y:貴重な機会を、ありがとうございました。私の歩みは決してすべての答えではありません。むしろ、皆さんの答えを見つけていく、きっかけになれたら嬉しいです。

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◼︎ヤン・イジュン(Yang Yijung)さん
プロフィール:
「ドトリカリカチュア/ Acorn Caricature)」の創業者・代表アーティスト

◼︎Instagram
Uncle’s painting
https://www.instagram.com/uncles_painting?igsh=NzF0bnkyMmhsMjcz

◼︎受賞歴
・JAPAN GRANDPRIX 2025(日本大会)
 総合5位

・2024 ISCAカリカチュア世界大会
 総合8位 

・JAPAN GRANDPRIX 2019(日本大会)
 デザイン部門3位

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