NPO法人 日本似顔絵アーティスト協会

Member Interview vol.13【特別編】


Member Interview vol.13【特別編】
『ケリー・オブライエンさん』
(聞き手・Kage)

 

全国各地で活躍する、
日本似顔絵アーティスト協会の皆様の、
多種多様な考えや働き方をご紹介する、
Member Interview。

 

第13回は【特別編】として、2016年日本大会のゲスト・アーティスト、
ケリー・オブライエンさんに、ご登場頂きました!

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―(Kage)ケリーさんはこの半年間、日本に移住し、カリカチュアジャパンで、働いていらっしゃいました。今日は帰国前日。お忙しい中、インタビューにご協力頂きまして、ありがとうございます。

(ケリーさん)ありがとうございます。とても緊張しています(笑)。
うまく喋れなかったら格好良く文章を直して下さい(笑)。

 

―私の中でケリーさんは全米のいたる所で描いていたり、世界中を旅してまわっていたり、飛び回っている印象があります。

全米を回る移動遊園地や、コミックコンベンションで描くので、旅をしながら描くようになりました。
外国を旅するようになったのは、大会に参加してからです。大会で世界中の仲間と出会い、彼らを訪ねることで視野が広がり、私の人生は変わりました。大会に行ってなければ、私は生まれ育ったフロリダから出ることはなかったと思います。

 

―ケリーさんは私たちから見ると、とても勇敢なチャレンジャーに見えます。
でもケリーさんはそのチャレンジや変化をとても楽しんでいるように見えるんです。今日はそうしたケリーさんのお考えをたっぷり伺いたいと思います。よろしくお願いします。

はい。お願いします!

 

―そもそもケリーさんが、絵をかき始めたのはいつからですか?

覚えていないくらい子供の頃からです。
でも私はとてもシャイな子供だったので、人に見せたりはしませんでした。他にとても上手な友達もいたこともあって、「クラスで絵がうまい子」は、私ではありませんでした。

 

―仕事にしたのはいつからですか?

17歳の時です。
大学の授業料を支払う為に働く必要がありました。
父の友人が米国で一番大きな似顔絵の会社、「カーマンズ・アートショップス」のヘッドアーティストと友達だったんです。私はすぐに電話をして、翌日面接に行きました。
私はあわてて描いたカリカチュアを、何枚か学校のバインダーにはさんで持っていきました。
面接で彼はものすごい速さで絵をめくり、溜息をつきながら見ていました。私は駄目だと思いましたが、たぶん当時、相当アーティストが足りなかったのか、奇跡的に雇ってくれました(笑)。

 

―そんなことはないと思いますが(笑)、でも良かったですね!
トレーニングはどうでした?

それがたった4時間のトレーニングで、次の日にデビューすることになりました(笑)。
正直に言うとトレーニングは、良いか悪いかではなく、売れるか売れないか、みたいな内容でした。

 

―私が初めてケリーさんに会ったのは、2014年のISCA世界大会でした。
本当に驚きましたね。初出場で、ベストライクネス部門で優勝されました!

ええ。2014年です。私もよく覚えています。
その時、私は大学卒業を間近に控えて、進路に悩んでいました。当時の私は、朝から夕方まで「シーワールド」で描き、夕方から夜まで「ファンスポット」で描く、カリカチュア漬けの毎日を過ごしていました。
そんな時、同僚のショーン・エヴァンスからISCAのことを教えてもらったんです。

 

―ショーン・エヴァンスさんは、ケリーさんが一番影響を受けたアーティストなんですよね?

はい。ショーンはデビュー当時、画材の使い方を教えてくれたり、SNSで見つけた世界中の素晴らしいアーティストの作品など、毎日たくさん見せてくれました。
日本の素晴らしいアーティストたちの存在を教えてくれたのもショーンです。
私は仕事仲間にとても恵まれました。ショーンをはじめとする同僚たちが私の可能性を広げてくれたんです。
彼らのすすめでFBの「カリカチュア・チャレンジング・グループ」に参加している内に、私もISCA世界大会に行ってみたくなりました。

 

―大会はどうでした?

ほとんど寝ませんでした。
夢中になって描き続けました。でも、シャイだったので、人に話しかけることは、あまりできませんでした。SNSで見ていた有名人たちを前に、興奮と緊張が入り混じった状態でした。

 

―印象的だったアーティストはいますか?

ジョー・ブルームですね。ジョーと初めて言葉を交わした時は、本当に緊張しました(笑)!

 

―大会ではどんな絵を描いたのですか?

私は持っている画材の全てを持っていきました。アートスティックスもマーカーも紙もキャンバスも、考えられる限りの方法で作品を描いて、壁に飾りました。描くだけでなく、切ってみたりもしました。

 

―大会で一番良かったと思えたことは何ですか?

何度も言ってますが、私は本来とてもシャイなのですが、色々な国から来た人たちと知り合ったことで、色々な国へ行ってみたいと思えたし、色々な作風を見て刺激をもらえたから、
もっと上手くなりたいと思えるようになりました。
本当に行って良かったです。

 

―最初は韓国に行ったんでしたっけ?

はい。
「ファン・カリカチュア」の代表、ヨーニ―・ウーがとてもポジティブに、韓国で描かいてみないかと、誘ってくれました。韓国の人達はとても親切で、良い思い出がたくさんあります。

 

―米国と韓国では、お客様の期待や絵の反応に違いはありましたか?

違いましたね。韓国はとくに、可愛く描いて!カッコよく描いて!
という期待が米国より強いです。可愛く描くことに対して、日々プレッシャーがありました。
でも、それは私のスタイルでもあったし、得意で描きたい作風が韓国で磨かれました。日本のお客様は誇張を楽しんでくれますし、日本人の反応は一番大きいと思いました。

―私の個人的な考えですが、可愛く、カッコよく、自分を表現して
もらいたいというお客様の期待は、世界中みんな同じだと思います。
でも日本の場合、多くのアーティストたちが生活をリスクにかけながらも、自分たちの
表現を一生懸命に現場で続けてきました。
そういう努力が日本では伝わってきている、というところがある気がします。

 

 

Kageさんが当時すごいと思ったアーティストはいましたか?

 

―私は2003年頃にアメリカから帰国したのですが、当時mikiさん、宮地真一さん、田畑伴和さん、佐々木知子さん、JEROさんらの作品には、衝撃を受けました。

日本人アーティストのライブスケッチのレベルの高さは、米国や韓国のアーティストの中でも、
とても人気があります。

 

―ケリーはなぜ日本に来ようと思ったのですか?

日本ではなかったんです。
カリカチュアジャパンという会社で働くのが夢でした。

 

―なぜですか?

カリカチュアジャパンのアーティストは、全員がとても上手です。そして会社として、どうやってその働き方が機能するのか。技術と働き方とすべてを盗みたかったのです。

 

―ありがとうございます。盗めました(笑)?
日本という外国に来て、育った環境と違う文化をもつ会社で働くことに不安はありませんでしたか?

私にとって大きなチャレンジではありませんでした。ここで働けることがとってもHAPPYでした。怖くもありませんでした。ただただとても興奮していました。
ちょうどハイウェイを運転している時、Kageさんから電話がかかってきて、「ビザが取れた!」と聞いた時、本当に嬉しくて嬉しくて。
あの瞬間が忘れられません!

 

―あぁ、そうでしたね。運転中、失礼しました(笑)!
それで実際に働いてみてどうでしたか?

素晴らしかったです!
文化の違いは理解していましたが、何よりも会社がアーティストに与えてくれる環境が夢の世界でした。
お店の近くに住居が用意されて、交通費が支給されて、固定給料がもらえる。
お店ではチームワークで営業をし、それぞれに役割が明確になっていました。他の会社では見たことがありませんでした。個々で売上を競うような妙な緊張感なく、リラックスしながら作画と営業を楽しめました。

 

―印象的だったことはありますか?

さつです。
最も刺激をもらえたアーティストです。
さつは私の来日を一番応援してくれたし、さつがいてくれたお陰で、しんどいことも乗り越えられました。
また、アーティストとしてもベストでした。彼女はお客様をものすごく愛しています。お客様も彼女をものすごく愛しています。さつは、お客様が何をほしいのか、お客様よりよく知っていると思います。

 

―手前味噌ですが、私もまったく同感です。
さつのライブスケッチは、「仕事」じゃないんです。「表現」だし「共感」だし、「ファン」なんですよね。

実際、私が目指す作風は、さつととてもよく似ています。
それは「ライクネス」と「ファン」です。私は作品を退屈にしたくないです。
私の作品は「ファン」であることが、最大の目標です。

 

―日本で働いてみて、
一番印象的だった事は何ですか?

それは毎朝10時半の朝礼です(笑)。
営業前に技術とサービスに対して、全員が宣言する「カリカチュアジャパン5カ条」の
唱和は最初驚きました。マネージャーの高坂さんからすべて覚えて下さいと言われて、
声を録音したものをくれて、文字で書いてたものと、翻訳をくれました。
絵を仕事にするということに対して、クレイジーカリカチュアカンパニーだと
私は思いました(笑)。

 

―ケリーさん、半年間本当にありがとう。アメリカに帰ってからも、この経験を活かして下さい。またいつでも戻ってきて下さいね!

本当に本当にありがとうございました。
アメリカの大会でまた皆と会えることを楽しみにしています!



【プロフィール】

ケリー・オブライエン(Kelly O’Brien)

フロリダ州オーランド出身。
3歳より絵を描き始め、
17歳で「Sea World」でプロデビュー。
世界中を旅して描いている。
好きな食べ物は、ラーメン。

2014年ISCAベストライクネス部門1位
ISCA審査員特別賞(セバスチャン・クルーガー)
2016年ISCA韓国大会スピード部門2位
ライブスケッチ部門2位