NPO法人 日本似顔絵アーティスト協会

Member Interview vol.16【特別編】


Member Interview vol.16【特別編】
『Tooグループ 志村裕輔様
(聞き手・Kage)

全国各地で活躍する、
日本似顔絵アーティスト協会の皆様の、
多種多様な考えや働き方をご紹介する、
Member Interview。

今回は【特別編】として、私たちに大変馴染みのある画材、コピックを製造販売する
Tooグループより、志村裕輔様にご登場頂きました。

 

志村様(左)とKage(右)

 

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(Kage)この度はインタビューにご協力頂きまして、誠にありがとうございます。
 御社といえば、私たち似顔絵描きにとって、なくてはならない画材である、コピックの製造、卸、販売会社様であり、また第1回日本大会から私たちの業界を支援して下さっている企業様でもあります。

今回は是非、御社の視点から見た、私たちの絵や業界について、ご意見を伺ってみたくてお願い致しました。

本日はよろしくお願い致します。

(志村様)
こちらこそ、いつもお世話になっております。
よろしくお願い致します。

 

まず、御社について教えて頂けますか?

はい。当社は1919年「いづみや」という画材屋から創業しまして、来年でちょうど100周年になります。
当時デザイン事務所の方々とお取り引きをすることが多く、カラーコピー機がない時代に、白黒に色を塗れるマーカーが必要になりました。

そこで誕生したのが、アルコールベースのマーカーが、コピックです。
『コピートナーを溶かさない、コピック』これが名称の語源です。

 

 

100周年!それはスゴイ。おめでとうございます。
私が御社とお取引をさせて頂くようになって、大変驚いたことがあります。
それは御社の取り扱い商品の幅広さです。私はコピックだけを製造する会社だと思っておりましたが、様々な取扱い商品があることに驚きました。
また、アーティストのニーズを柔軟に拾い上げて、どんどん新商品を開発されていく姿勢にも、大変感銘を受けました。

ありがとうございます!
仰る通り、時代の流れやニーズに合わせて、当社が取扱う商品の開発は進んで参りました。
デザイン事務所で使う画材がデジタル化されてきたため、PC販売も始めました。アップルが出だした頃ですね。
そしてソフトウェア(アドビ、フォトショップ、イラストレーター、3Dプリンターなど)やコピー機などの販売も致しております。

 

志村さんはどうしてこの仕事を選んだのですか?

私も、もともとは描く側の人間でした。
学生時代はデザイナーを目指していて、デザインの勉強をしていました。スペースデザインというものです。
当時から建築パース図にコピックを使って描いていました。そして一度、違う仕事についたのですが、いろいろな人と会って、いろいろな意見を聞くなかで、自分はバックアップする側に回って活躍できる仕事につきたいと思ったのです。

 

「いろいろ」といいますと?

う~ん。甘かったんだと思います。
すごい人を見たんです。本当にすごい才能と技術を持った人でした。
自分には出来ないなと思うほどでした。でも、そんな人でもうまくいかないことを知って、自分はそういう人たちを支援したいな、と思ったのです。

 

そういった経験があるから、志村さんはいつもアーティストの声に、ご丁寧に耳を傾けて下さるんですね。しみじみ理解を致しました。ありがとうございます。

そんな志村さんは現在、どのようなお仕事をなさっているのですか?

当社は「あらゆるクリエイティブを支援する会社」です。

私は国内のマーケティングを担当しています。そうしたなかで一つ大切な仕事があります。それが「コピックアドバイザー」の講師です。
全国の取扱い店舗を回りまして、販売される方々にコピックについて講習を行っています。歴史について。成分について。性能について。種類について。インクの補充の仕方。筆先の交換の仕方。基本的な塗り方。紙によっての表現の違い。

そういったお客様対応時に知識として必要と思われることを想定しながら、お伝えをしています。これまでにコピック認定アドバイザーは200名を超えました。

 

一般に、コピックの利用者とはどんな方々が多いのですか?

やはりマンガが圧倒的です。オリジナルとコミケなどで販売される、二次創作を含めて大変大きな需要があります。

次にクラフトです。クラフトとは、ペーパークラフト、革、キルト、ハンコ、ルアーなど。そして風景画。

もちろん、似顔絵アート。精密画など。最近では我々でも知らない業界にも広がっていることが多くあります。皆様のような似顔絵も私たちにとってはその一つでした。コピックはまさに「ユーザーが作っていってくれたブランド」といえます。

 

コピックの歴史はどれくらいですか?

1987年にコピッククラシックが誕生しまして31年になります。皆様にお使いいただいているコピックスケッチは1993年誕生で25年となります。

 

コピックを愛用する漫画家さんには、どんな方がいらっしゃいますか?

黎明期には、CLAMPさん峰倉かずやさん大暮維人さん、今ですと、尾田栄一郎先生岸本斉史先生にもコピックをご利用頂いているようです。

 

御社製品の特長やこだわりがあれば教えて下さい。

プロの道具としての総合性能の高さを常に追求しています。
カラーバリエーションが豊富、安定した色の管理、色彩配色が思考しやすいカラーシステム、使うときにドライアップしないキャップ気密性の高さ、補充インクや交換ニブで繰り返し使える採算性の高さ、などこだわりが詰まっています。

特にスーパーブラシというペン先の使い勝手の良さと耐久性は高い評価をいただいております。

1本で何十年も使える性能は、Too(旧社名いづみや)が日本にマーカーを発売してから培われてきたノウハウが詰まっています。

 

コピックといえば豊富な色数も特長ですよね。
僕はいまだに売り場に陳列されたコピックを見るたびに、「キレイだなぁ」と、足を止めて眺めてしまいます。

ありがとうございます(笑)
色数は358種類あります。

 

海外需要も高いんですよね?

そうなんです。コピックは世界55か国で展開していますが、国によって安全基準が異なる為、カドミウムなど使えない原料が増えています。ですが、コピック製品はあらゆる国で対応できるものでなくてはならないので、違う原料を使って同じ色を作れるように、開発に努めています。

 

私が米国でカリカチュアを描いていた96~01年まで、当時、皆がデザインマーカーとよばれるペンを使用していましたが、成分に含まれるザイリンという素材が突然NGになりまして、販売中止になったことがありました。
業界全体が揺れましたね。

プロの絵描きさんにとって、画材がなくなるというのは、大変な問題ですよね。ちょうど一昨年に、当社もコピックの供給が不足したことがありました。私自身、最初に思い浮かべたのがカリカチュア・ジャパンさんでした。

商売道具がないというのは、「ありません」では済まないと本当に焦りました。今は、ようやく供給体制が整いました。

 

あれはびっくりしました。
当社も現在は在庫をしっかりと確保させて頂いております。たまに「きれいだなぁ」と眺めています(笑)

ありがとうございます(笑)

 

さて、御社には第1回大会より、似顔絵日本一決定戦のご協賛を頂いております。
志村さんには2度も大会にご参加頂きましたが、大会をご覧になられてどのような印象を持たれましたか?

コピックのマーケティングに最も必要なことは、ユーザーの方々との接点です。そうした機会を求めていたので、すごく刺激的でした。とくに作家さんたちのコピックの使用量と制作にかける熱量には驚きました。
真剣に作品に向き合っている姿を目の当たりにして、身の引き締まる思いがしました。社内の者たちにも、あの空間を体験してほしいと思いましたし、一般の方々にも、もっと知って頂きたいなと思いました。
自分だけじゃもったいない、と思いました。

 

大会で印象的だった作家や作品がありましたら、教えて頂けますか?

個人的な意見になってしまいますが、やはりコピックの作品に目がいってしまいます。
カリカチュア・ジャパンのメンバーのラインクオリティは圧倒的だと思いました。すべてのコピック・ユーザーの中であのラインの美しさは一番だと思っています。
それだけ日々、手を動かして使って頂いているというのが、とてもよく分かりました。

 

前回大会でコピック賞は野田啓太が頂きました。

よく覚えています。野田さんと後藤智寛さんで、とても悩みました。お二人はコピックを使っていましたが、原画から感じられる思いが伝わってきました。

コピックを製造する立場からの想いですが、デジタルから入ってきた若い人たちに、コピックを使えるのがかっこいいと思って頂きたいんです。
やはり実物には重みがあります。本物の強さがあります。1点物には価値があります。2度と同じ物は生まれません。
私たちが似顔絵アーティストを応援したい理由の一つに、その瞬間を1枚の紙に、自分の手で表現をし、お客様にそれを提供して、喜んで頂く。
この過程のすべてに、アーティストの思いが詰まっている。似顔絵はとても価値のあるものだと、私は思っています。

 

とても嬉しいです。ありがとうございます。
似顔絵アーティストたちへメッセージをお願いします。

アーティストの方々自身は、一人一人が思いを持って活動をしていらっしゃって、色々なところで戦っていらっしゃると思う。

武器である画材をしっかりと供給するので、精一杯戦ってほしいなと思います。

これは似顔絵に限らずですが、SNSで個人のプロモーションができる場がいっぱいできている。技術はもちろん大事ですが、発信、営業力を身に着けないと、目に留まらない可能性がある。

皆さんには自信を持って、これに取り組んでもらえたら、もっと多くの人に楽しんでもらえると思う。

似顔絵にはチカラがあります。

協会にはその発表の場を作ってあげたり、困った時の後ろにいてあげてほしい。
似顔絵アーティストの方々の未来に期待しています。頑張って下さい。

 

最後にお知らせなどありましたら。

はい。

「コピックアワード」というものを開催致します。
コピックユーザーのアカデミー賞のようなものです。

この大会は今年で2回目ですが、世界20か国以上からコピックを使った作品が集まります。
募集期間は2018年12月3日~3月1日まで。
web上でエントリーし、審査致します。
2019年6月に入賞作品を表彰式と展示予定です。
是非、ご参加頂けたらと思います。
https://copicaward.com/ja/

前回のコピックアワード受賞者

 

志村さん、今日はお忙しいなか、ありがとうございました。

ありがとうございました!
これからもよろしくお願い致します。

 

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【プロフィール】

志村裕輔様

株式会社G-Tooにて、アルコールマーカー「コピック」のマーケティングを担当し、
コピックアドバイザー講師としても活動。
クリエイティブをより身近に楽しめる未来にできるよう、日々奮闘中。

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